無駄に鋭い

無駄に鋭い

「おはよう」
と給湯室に行くと、礼子が、

 

「あれー? どうしたの?
 真湖りん。

 

 ご機嫌じゃん?」
と言ってくる。

 

 真湖りんってなんだ、と思いながらも、
「いや、別に」
と言うと、

 

「うそうそ。
 なんかあったでしょー?」
と責めてくる。

 

 ……こいつ、無駄に鋭いな、と思っていた。

 

 課長と一緒というのが、少々気が重いが、よく考えたら、旅行だ。

 

 しかも、あんなすごい宿に。
 返すとき、ボーナス結構吹っ飛ぶけど、一生に一度はあんなところに泊まってみるのも悪くない。

 

 次に泊まれるのは、新婚旅行か、年をとってから行く定年後の旅行くらいだろうし。

 

 機嫌良くお茶を煎れていると、
「……やっぱりなんかあるな」
と礼子と先輩たちが言っていたが、今は気にならなかった。
用事があって、下のフロアに下りたとき、ちょうど、雅喜と出くわした。

 

 本部長と話しているようだが、なにやら、頭を下げている。

 

「いやいや、じゃあ、また」
と本部長が鷹揚に笑って行こうとする。

 

 雅喜がもう一度頭を下げ、少し離れた位置に居た自分も目が合ったので、下げておいた。

 

 去り際の本部長の目線で気づいたのか、雅喜が振り向く。

 

 だが、雅喜はそのまま、なにも言わずにエレベーターへと向かった。

 

 自分も戻るところだったので、なにも言わずについて行く。

 

 エレベーターが着いて、扉が開く瞬間に真湖は訊いた。

 

「なんで、土日のゴルフ断ったんですか?」

 

「聞いてたんじゃないか」
と振り向き、雅喜が言った。


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