電話

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 結局、その日は礼子と夕食を食べに行ったが、礼子の好きな人の最新情報を提供し、なんとか話をそらして誤摩化した。

 

 帰り道、コンビニで最近見かけなくなっていたお気に入りのチョコプリンを発見したので。

 

 ソファに座ってそれを食べながらテレビを見ていると、やっぱり、あの夜の出来事は夢だったような気がしてくる。

 

 まあ、夢ではないにしても、お互いの中でなかったことにしてしまえば、それはなかったのと同じことだ。

 

 そう思ったとき、スマホが鳴った。

 

 なんだろう、とソファに置いていたそれを見ると、『五嶋雅喜』と表示されている。

 

 ……なんだ、これ。
 登録しているはずのない番号が出るとか、怪奇現象か?
と思いながらスマホを眺めていると、鳴り止んだ。

 

 幻聴だな。

 

 そして、幻覚だ、と思いながら、プリンをもう一口、口にし、テレビを見て、ははは、と笑ったとき、またスマホが鳴り出した。

 

 『五嶋雅喜』

 

 今、テレビでやってるドッキリに自分が出演している気分になった。

 

 だが、本当に本人からかかっているのなら、これ以上出なかったら、きっと殺される。

 

 真湖は仕方なく、はい、と出た。

 

『沢田』
と紛れもない雅喜の声がした。

 

 よく通る、部下を遠慮会釈なく叱り飛ばすのに適した声だ。

 

『何故、お前の番号が俺のスマホに登録されている』
それは私のセリフですが、と思いながら、

 

「……ドッキリじゃないですかね?」
と、思わず、今、思っているままを言うと、

 

『誰が俺にドッキリを仕掛けるんだ。
 一般人の俺にドッキリを仕掛けて、誰が喜ぶんだ』
と言ってくる。

 

 電話の向こうから、自分ちのテレビと同時に笑い声が聞こえてきた。

 

 どうやら、同じ番組を見ているらしい。

 

「課長、ドッキリとか見るんですね」
と言うと、今、その話をしてるんじゃないだろう、と叱られた。

 

「それにしても、よく、私の番号が登録されているのがわかりましたね。

 

 私は、今、課長からかかるまで、課長の番号が登録されていることに気がつきませんでしたよ」
と言うと、

 

『お前のにも登録されてるのか』
と残念そうに言う。

 

 なんなんだ、と思った。


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