旅行

旅行

それはいいがって。
 他人事かと思って。

 

 自分で言っておいて、そうですよね、私が一生酒が呑めなくても、貴方には関係ないことですもんね、といじける。

 

 っていうか、貴方も酒、やめた方がいいですよ、と思った。

 

 酒の席で女の子と話が合うたび、旅行に行っていたら、そのうち、刃傷沙汰になるに違いない。

 

「しかし、この土日ですか?
 キャンセル料かかるじゃないですかっ」

 

 せこいこと言うなあ、と雅喜は言ったようだったが、こちらにも責任がある。

 

 半分は出さねばならないだろう。

 

 あまり思い返したくない記憶だが、あの絵の前で、雅喜のスマホをいじりながら、
『あっ。
 私、この宿、泊まってみたかったんですよーっ』
と言って高い宿をクリックしてしまった気がするのだ。
「すみません、課長。
 私が三分の二払います……」
と言うと、どうした、と言われる。

 

 雅喜の方が自分よりも更に記憶がないようだった。

 

 そこのところも覚えていないらしい。

 

 まあ、犯人は私だろうな、と思っていた。

 

 五嶋課長は、酔って浮かれて宿を頼んでしまうようなキャラではない。

 

『これ、キャンセル料だけでも、結構取られるぞ』

 

 っていうか、泊まったら、もっと取られます……。

 

 私の給料の半分は飛んで行く気がする、と思っていると、
『俺は土日は用はないんだ。
 行ってみるか、沢田』
と言い出した。

 

「はい?」
『いや、ミュシャが来るの久しぶりじゃないか。
 ちょっと見てみたい。

 

 確か、頼んだ部屋は、中が何部屋にも別れていたから、別の部屋に泊まるのと変わらないだろう』

 

 まあ、そりゃそうなんですが、と思っていると、

 

『どうせ金がないんだろうから、貸しておいてやる。
 分割払いで返せ』
と言ってきた。

 

「いや、無理です、課長っ」
と真湖はスマホを握りしめる。

 

「ボーナス一括でお願いしますっ」

 

『……わかった』
と言って電話は切れた。

 


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